2005年12月20日

株が増えファンドが増えてもこの国の安全神話は揺るぎなきなり

 投資の話を続けよう。といってももうけ話じゃなくって統計データを詳しく読み解くという話。

(Dec/15/05 読売新聞より引用開始)
【個人金融資産1454兆円,過去最高を更新】
 日本銀行が15日発表した資金循環統計(速報値)によると,今年9月末の個人(家計部門)の金融資産残高は前年同期比3・3%増の1454兆円となり,1979年度末の調査開始以来の過去最高を更新した。
 株価上昇で株式の評価額が上がったことが主要因だ。
 内訳を見ると,最近の株高を背景に,株式が24・8%増の96兆円,投資信託が28・4%増の45兆円と過去最高。個人マネーがリスク資産に向かっている様子をうかがわせた。(略)
(引用終了)

 この数字を確認するには,日銀のサイトを直接見るとよいでしょう(→リンク,日米比較データはこちら(PDFファイル直リンク))。餅は餅屋。いろいろ見ていくとおもしろいことがわかります。2005年9月末の数字ですが,発表されたデータで興味深いものを上げてみると,

  • 個人金融資産1,454兆円とはグロスの値であって,負債(ローンなど)を控除したネットで見ると,1,073兆円である。
  • 現預金は774兆円で全体の53.2%を占めている。アメリカはなんと13.4%!
  • 次いで大きいのが保険年金準備金387兆円で26.6%。アメリカは日本よりも大きくて30.6%。
  • 株式出資金が142兆円で全体の9.8%(記事では株式のみにスポットを当てている)。アメリカはなんと33.8%!
  • 投資信託も全体の3.1%に過ぎない。ちなみにアメリカは13.2%。
  • 国債は25兆円。ちなみに昨年度末は21兆円。

 新聞は断片しか伝えませんが(紙面が限られているので仕方がない)情報を受けとる我々はいろんな方面への興味があるわけですから,原典にあたることは決して無駄なことではありません。新聞が公表しない隠された「何か」を発見することもありますし,ここでの日米比較などのデータは興味深い雑学のネタとしても使えます。
 と同時に,日米での統計の取り方や定義の違いなどがあるので単純に比較してしまうのは要注意です。日本では「家計」に個人事業主も入っているとか,母集団自体が変わってしまうと本来ならそれらを調整して比較しないといけません。ま,それらを区別する手だてがない以上,そういう定義の違いなどがあるという事実を知ったうえで補足事項として脚注表記するぐらいしかできませんけど。

 個別に見ていきましょうか。
 個人金融資産がどんどん増えていているということはよく新聞などでも採り上げられているので社会人ならもう常識でしょう。それがついに1,454兆円にまでなったようです。10月以降の株高を考えればさらに増えていることだと思います。ただし注意がいるのは,そのままの金額が家計の金融資産ではないということ。「日本の家計は1,400兆円ももっているから日本の国の財政がまっかっかでも大丈夫なんだ」というような使われ方をしてしまうといけません。上記のようにグロス値なので,住宅ローンなどの返さないといけないお金も考えて,そのうえで論じないと間違います。まあでも銀行借入323兆円などを控除したとしても,ネットで1,073兆円もあるっていうのはすごいことですね。外資系がこぞってやってくる理由もわかるというものです。

 次は現預金。グロスの比で53.2%で,ネットで見れば72.1%ですから,株ブームといってもまだまだ安全指向な国民性があぶりだされますね。この数字を向こう側から見たら,日本は今でも間接金融主体だということもわかります。アメリカと比べれば面白いぐらいに違いが鮮明になりますね。これはもう民族性だね。良いとか悪いとかじゃなくて。

 保険年金の準備金はまあいいでしょう。将来の不安をカバーすることは大事なことですし,それなりに金額がないとかえって心配になります。これが大きく減っていたり(毀損していたり)すると要注意なんですが,株高だし調子は良いようです。

 株式・出資金もようやく日本で10%程度まで上がってきました。ブームですからねえ。で,これが昨日のエントリのように素人相場になっているのだとしたら要注意なんですよね。とはいえバブル期は20%を越えていたようですから,見方によってはまだ大丈夫なのかも。隣のおばちゃんまでネットトレードし始めたら,それが売りサインになるんだと思っていて間違いないでしょうけど。

 投資信託は思ったより少ないなあという印象。増加率で見たら記事のとおり大きく伸びているんだけど,グロソブとかMMFの人気でもっと増えているんだと思っていました。手数料高くて運用実績が低いファンドが多いから,そろそろ投資家も飽きてきた(騙されていることに気付いた)のかもね。

 で,注目すべきは国債。順調に伸びています。調子に乗って固定金利型の国債も売り出したぐらいですから,来年もこの調子で増えていくのかもしれません。景気がよくなって金利が上がったら元本割れするってことも知らずにね(当然満期まで持てば元本が帰ってきますけど)。景気回復を願うのであれば国債なんて買えないはずなんだけど,まったく日本人はお人よしが多いですねえ。

 さて,今日書きたかったのはこれだけではなくて,こうやって徐々に増加してきた個人の金融資産を狙って各金融機関の競争も激化しているという事例もあげてみます。少し前に新聞に出ていた三井住友銀行の独禁法違反の件で大きな話題を呼びそうなニューズが入ってきました。金融商品を売る側もバブル期のような低モラルに戻ってしまって,税金を大量に入れてもらって救っていただいた国民に恩をあだで返すようなやり口がとうとう公取委の逆鱗に触れてしまったようです。

(Dec/20/05 東京アウトローズWEB速報版より引用開始)
【三井住友銀行,「公取委・排除勧告」応諾の波紋=z
  三井住友銀行が,金融派生商品の販売で公正取引委員会から排除勧告を受け,応諾した問題が波紋≠呼んでいる。すでに本誌12月16日付のミニ情報で,この排除勧告の背後には,「西川善文・同行特別顧問の郵政民営化会社トップ就任に反対する三菱UFJ銀行サイドと金融庁首脳の影が見え隠れする」と報じたが,一部マスコミでも同様の報道がなされている。
 今回の排除勧告は,三井住友側が融資をエサに変動金利を固定金利に変える金利スワップ商品を販売,その際,支店の担当者が融資決済権限を持った上司を帯同していたことなどから,「優先的地位の乱用」を禁じた独禁法に違反した,というもの。
 では,三井住友側は何故,あっさりと排除勧告を受け入れたのか。排除勧告の応諾は,刑事事件で言えば,罪を自供した≠ノ等しく,「審判」で争うことも出来たハズだ。その辺りの事情について,ある関係者は次のようにいう。
「公取委からヤリ玉に挙げられた10数件のうち一部に関して,三井住友の内部文書が流出した。動かぬ証拠を公取委,金融庁に押さえられてしまったため,三井住友は認めざるを得なくなった」
 三井住友の金融派生商品の販売は,数千件に達すると見られている。今回の排除勧告応諾を受けて,すでに日弁連を中心に損害賠償を請求する民事訴訟の動きも出ているという。場合によっては,三井住友は相当の出血≠覚悟せざるを得なくなるかもしれない。
(引用終了)

 三井住友はロスチャイルド系(日銀と同じ系列)ですから,郵政民営化で一番おいしいところをかっさらっていった西川らへの反撃をロックフェラー系の三菱が仕掛けているという見方ですね。低モラルで無茶苦茶な売り込みをしているのはもちろん三井住友だけではありません。どこだって似たようなことをやっています(やらないとノルマを達成できない)。なのにこういう情報をリークされて,しかも証拠があちらさんに挙がっているという状況ができあがって三井住友だけが悪者にされたとなると,こりゃあまだまだいろいろと起こってきそうな雰囲気ですね。郵政公社の主導権争いがこれからますます激化するということでしょうか。ま,どっちにせよ国債は売られるのは既定路線でしょうけど。インフレ・円安には放っておいてもなりそうだ・・・と,いつもの結論を出して今日は終わり。
posted by 時をかける僧侶 at 18:14| Comment(0) | TrackBack(1) | 投資一般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/10866823

この記事へのトラックバック

ああ、おじさん達よ!
Excerpt: みなさん、やっぱりお金欲しいんですかね。
Weblog: FreeDiary
Tracked: 2006-01-15 21:22